「40歳を過ぎてもピルを飲み続けて大丈夫だろうか」。長年ピルを服用してきた女性の多くが、この疑問を抱えています。低用量ピルには年齢による服用制限があり、条件によっては継続できなくなるケースも。ピルを何歳まで飲めるのか、年齢制限の理由、やめた後の代替策まで、判断に必要な情報をまとめました。
ピルは何歳まで飲んでいい?年齢制限の基本ルール
ピルの服用可能年齢は、喫煙習慣や持病の有無によって異なります。自分がどの基準に該当するか、まず確認しましょう。
基本は40歳まで(条件を満たせば閉経まで可能)
低用量ピルを服用できるのは、原則として40歳までです。
OC・LEPガイドライン2020年版(日本産科婦人科学会)によると、40歳以上は「慎重投与」の対象となります。加齢に伴い心血管系疾患のリスクが上昇するためです。
ただし「40歳で全員やめるべき」というわけでありません。以下の条件を満たす女性は、医師の判断により閉経まで服用を継続できる場合があります。
- 非喫煙者
- BMI30未満
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症がない
- 血栓症の既往歴がない
- 前兆を伴う片頭痛がない
「40歳過ぎても飲んでいる人がいる」という声を聞くのは、これらの条件を満たしているケースがほとんどです。自分が該当するかは、必ず医師に確認してください。
喫煙者は35歳までが原則
喫煙習慣がある女性は、ピルを服用できる年齢がさらに厳しく制限されます。
WHO(世界保健機関)の基準では、35歳以上で1日15本以上喫煙する女性は、ピルの服用が原則禁止となっています。喫煙とピルの併用は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを大幅に高めるためです。
35歳未満でも喫煙者は「慎重投与」の対象となり、医師の判断によっては処方を断られることもあります。ピルの継続を希望するなら、禁煙が最も確実な方法です。
50歳以上は閉経していなくても服用不可
50歳を過ぎると、閉経の有無にかかわらずピルは服用できません。
年齢自体が血栓症の大きなリスク因子となるためです。特に静脈血栓塞栓症(足の静脈に血栓ができ、肺動脈に詰まる疾患)のリスクは、50歳以上で急激に上昇します。
まだ月経がある場合でも、50歳になったらピルから他の方法への切り替えが必要です。更年期症状への対応はホルモン補充療法(HRT)など、別の選択肢を検討しましょう。
なぜ年齢制限がある?血栓症リスクを数字で理解する
「血栓症が怖い」と聞いても、実際にどれくらいのリスクなのかピンとこない方も多いと思います。具体的な数字で確認します。
血栓症の発症率を比較(1万人あたり)
ピル服用による血栓症リスクは、以下の数字で把握できます。
| 対象 | 発症率(1万人あたり/年) |
|---|---|
| ピル非服用者 | 1〜5人 |
| ピル服用者 | 3〜9人 |
| 妊娠中・産後 | 5〜20人 |
(出典:日本産科婦人科学会 OC・LEPガイドライン2020年版)
ピル服用者の発症率は非服用者の約3倍です。ただし妊娠中・産後と比べると低い水準であり、「ピル=危険」と過度に恐れる必要はありません。問題は、この数字が年齢とともに上昇することです。
40代でリスクが急上昇する理由
血栓症リスクは、年齢が上がるほど急激に増加します。
国内の調査では、ピル服用者1万人あたりの血栓症発症率は以下のように報告されています。
| 年代 | 発症率(1万人あたり) |
|---|---|
| 20代 | 約3人 |
| 30代 | 約5人 |
| 40代 | 約10人以上 |
(参考:第22回肺塞栓症研究会「わが国における女性ホルモン剤使用に起因する血栓塞栓症の実態」)
※上記は参考値であり、調査対象や条件によって異なる場合があります。
先天性血栓性素因保有者の妊娠管理および女性ホルモン剤使用に関する診療ガイドラインの策定
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162051/201610025B_upload/201610025B0008.pdf
40代の発症率は20代の3倍以上となっており、これが「40歳以上は慎重投与」とされる理由です。リスクを理解した上で、継続するかどうかを医師と相談してください。
【チェックリスト】あなたはピルを続けられる?
医師に相談する前に、まず自分の状況を整理しましょう。以下のチェックリストで、継続可能かどうかの目安がわかります。
ピル継続セルフチェック
以下に1つでも該当すれば「服用不可」または「要相談」:
| 項目 | 該当 |
|---|---|
| 50歳以上である | □ → 服用不可 |
| 35歳以上で1日15本以上喫煙している | □ → 服用不可 |
| BMI30以上である | □ → 要相談 |
| 高血圧・糖尿病・脂質異常症がある | □ → 要相談 |
| 血栓症の既往歴がある | □ → 服用不可 |
| 前兆を伴う片頭痛がある | □ → 服用不可 |
| 乳がんの既往歴がある | □ → 服用不可 |
すべて非該当なら:
- 40歳未満 → 継続可能
- 40歳以上 → 医師の判断により閉経まで継続可能な場合あり
このチェックリストはあくまで目安であり、最終判断は医師が行います。「医師に聞くまでわからない」と思わず、まずセルフチェックで自分の状況を把握してから相談すると、話がスムーズに進みます。
ピルの代わりになる3つの選択肢
年齢や持病でピルを継続できなくなった場合、目的に応じた代替策があります。まず3つの選択肢を比較表で確認しましょう。
代替策比較一覧
| 項目 | ミニピル | IUD(ミレーナ) | HRT |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 避妊・PMS改善 | 避妊・月経量減少 | 更年期症状緩和 |
| 血栓リスク | ほぼなし | なし | 低い |
| 費用目安 | 月3,000〜5,000円 | 2〜5万円(5年間有効) | 月1,000〜3,000円 |
| 適応年齢 | 40代以降も可 | 40代以降も可 | 閉経前後〜 |
| 注意点 | 3時間以上のズレで効果低下 | 装着時の痛み | 乳がんリスクの定期確認 |
選び方の目安:
- 避妊が最優先 → ミニピル or IUD
- 毎日の服用が面倒 → IUD
- 更年期症状がつらい → HRT
ミニピル(血栓リスクなしで40代以降も可)
ミニピルは、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含む経口避妊薬です。
低用量ピルの血栓リスクは、主にエストロゲン(卵胞ホルモン)が原因です。ミニピルにはエストロゲンが含まれないため、血栓症リスクがほぼなく、40代以降や喫煙者でも服用可能となります。
| 項目 | ミニピル | 低用量ピル |
|---|---|---|
| 血栓リスク | ほぼなし | あり |
| 避妊効果 | 99%以上 | 99%以上 |
| 服用方法 | 毎日同じ時間(3時間以上のズレで効果低下) | 毎日(多少のズレは許容) |
| 休薬期間 | なし(365日連続服用) | あり(7日間) |
| 費用 | 月3,000〜5,000円(自費) | 月2,000〜3,000円 |
注意点は、服用時間の厳守。3時間以上ずれると避妊効果が低下するため、アラーム設定などの工夫が必要です。
子宮内避妊器具(IUD/ミレーナ)
避妊が主な目的なら、子宮内避妊器具(IUD)も有効な選択肢です。
特にミレーナ(黄体ホルモン付加IUD)は、避妊効果に加えて月経量の減少や生理痛の軽減効果も期待できます。一度装着すれば5年間効果が持続し、毎日の服用が不要な点がメリットです。
挿入費用は2〜5万円程度(保険適用外の場合)。血栓症リスクがないため、ピルを中止した40代以降の女性にも適しています。
ホルモン補充療法(HRT)への移行
更年期症状の緩和が目的なら、ホルモン補充療法(HRT)への切り替えが推奨されます。
HRTは、閉経後に減少するエストロゲンを補充する治療法です。ほてり、発汗、動悸、イライラなどの更年期障害に効果があり、骨粗しょう症の予防にもつながります。
投与方法は飲み薬、貼り薬、塗り薬の3種類。費用は月1,000〜3,000円程度(保険適用の場合)です。ピルとは目的もホルモン量も異なるため、更年期症状にはピルではなくHRTが適切です。移行のタイミングは、45〜50歳頃に医師と相談してください。
ピルと年齢に関するよくある質問
まとめ
ピルを何歳まで飲めるかは、年齢だけでなく喫煙習慣や持病によって異なります。
判断の3つのポイント:
- 40歳までが基本。非喫煙・持病なしなら閉経まで継続可能な場合あり
- 喫煙者は35歳までが原則。禁煙すれば制限が緩和される可能性も
- 50歳以上は閉経の有無にかかわらず服用不可
ピルを継続するか、代替策に切り替えるかは、自分の状況を正しく把握した上で医師と相談することが大切です」。
医師に相談すべきタイミング:
- 40歳を迎えたとき
- 45歳で閉経確認を行うとき
- 血栓症のリスク因子(喫煙・肥満・高血圧など)が発生したとき
判断に迷ったら、まずは婦人科を受診して、今の自分に最適な選択肢を確認してください。
