「ピルを飲んでみたいけれど、副作用が心配」「飲み始めたら吐き気がひどくて不安」——そんな悩みを抱えていませんか。
ピルは避妊や生理痛の軽減に高い効果を発揮する一方、ホルモンバランスを変化させる薬であるため、体に何らかの反応が出ることがあります。ただし、その多くは体が薬に慣れる過程で起こる一時的なもので、正しい知識を持っていれば過度に恐れる必要はありません。
この記事では、ピルの副作用について「どんな症状があるのか」「いつまで続くのか」「どう対処すればいいのか」を、医学的な根拠に基づいて解説します。血栓症のリスクについても、数値データを用いて正確にお伝えしますので、ピルの服用を検討中の方も、すでに服用中で副作用が気になっている方も、ぜひ参考にしてください。
低用量ピルとは?副作用が起こる仕組み
副作用を正しく理解するには、まずピルがどのように体に作用するかを知ることが大切です。
ピルに含まれる2種類の女性ホルモン
低用量ピルには、2種類の女性ホルモンが含まれています。
1つ目は卵胞ホルモン(エストロゲン)です。排卵を抑制する働きがあり、低用量ピルの避妊効果の中心的な役割を担っています。ただし、血液を固まりやすくする作用もあるため、血栓症のリスクに関わる成分でもあります。
2つ目は黄体ホルモン(プロゲステロン)です。子宮内膜を薄く保つ働きがあり、これによって経血量が減り、生理痛も軽減されます。一方で、体内に水分を溜め込みやすくする性質があるため、むくみの原因になることがあります。
この2つのホルモンを服用することで、脳は「今は排卵後の状態だ」と認識し、新たな排卵を起こさなくなります。いわば「疑似的な妊娠状態」を作り出すことで、高い避妊効果を実現しているのです。
副作用は「体が慣れるまでの一時的な反応」
ピルの副作用の多くは、体内のホルモンバランスが急激に変化することへの適応反応です。
ピルを飲み始めると、体は「妊娠したのかもしれない」と勘違いし、妊娠初期に似た症状が現れることがあります。吐き気や胸の張りは、その代表的な例です。
「副作用が出たらどうしよう」と不安になる気持ちはよく分かります。しかし、こうした症状の多くは1〜3ヶ月で自然と軽減していきます。体が新しいホルモン環境に慣れてくるためです。また、服用時間の工夫や薬の種類変更など、対処法もあります。副作用は「我慢するしかないもの」ではありません。
ピルの主な副作用一覧と発現率
ピルの副作用は「マイナートラブル」と呼ばれる軽度なものが中心です。以下に主な症状と発現率をまとめます。
吐き気・嘔吐
発現率:5%以上
ピルの副作用として最も多く報告される症状の一つです。エストロゲンが胃の粘膜に影響を与えることが原因と考えられています。
飲み始めの1〜2週間に特に出やすく、「気持ち悪い」「食欲がない」といった訴えが多くあります。つわりに似た症状と表現されることもあります。
対処法として、就寝前に服用する方法が有効です。寝ている間に血中のホルモン濃度がピークを迎えるため、起きている時間の不快感を減らせます。それでもつらい場合は、医師に相談して吐き気止めを処方してもらうことも可能です。
頭痛・片頭痛
発現率:0.1〜5%未満
ホルモンバランスの変動により、血管が拡張・収縮することで頭痛が起こることがあります。生理前に頭痛が起きやすい人は、ピルでも同様の症状が出る可能性があります。
市販の鎮痛剤で対処できることが多いですが、「目の前がチカチカする」「視野が欠ける」といった前兆を伴う片頭痛がある人は、脳血管の血栓リスクが高まるため、ピルを服用できません。このような症状がある場合は、必ず医師に伝えてください。
不正出血
発現率:約30%(飲み始め)
ピルを飲み始めた初期に最もよく見られる副作用です。生理以外のタイミングで少量の出血があったり、おりものに血が混じったりします。
子宮内膜が薄く保たれる過程で起こる現象であり、基本的に心配はいりません。3ヶ月以内に改善するケースがほとんどです。
ただし、生理2日目のような大量の出血が続く場合や、3シート目以降もダラダラと出血が続く場合は、ピル以外に原因(子宮の病気、性感染症など)がある可能性があります。医師に相談してください。
むくみ・体重増加
発現率:0.1〜5%未満
黄体ホルモンには体内に水分を溜め込む作用があるため、顔や足がむくんだり、体重が増えたように感じたりすることがあります。
「ピルを飲むと太る」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、ピル自体に脂肪を増やす作用はありません。むくみによって一時的に体重が増えることはありますが、これは水分によるものです。塩分を控えめにしたり、カリウムを多く含む食品(バナナ、アボカドなど)を積極的に摂ったりすることで軽減できます。
乳房の張り・痛み
発現率:0.1〜5%未満
生理前と同様に、胸が張って痛みを感じることがあります。ホルモンバランスの変化によるもので、体が慣れるにつれて軽減していきます。
締め付けの少ない下着を選ぶなど、日常生活での工夫で対処できることが多いです。
気分の落ち込み・抑うつ
発現率:0.1〜5%未満
ホルモンが脳内の神経伝達物質に影響を与え、気分が落ち込んだり、イライラしたりすることがあります。
「ピルを飲むとうつになる」という噂を耳にすることがありますが、現時点ではピルと抑うつの明確な因果関係は証明されていません。むしろ、PMS(月経前症候群)による精神的な不調がピルで改善するケースも報告されています。
ただし、気分の落ち込みが2週間以上続く場合や、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合は、医師に相談してください。
眠気・倦怠感
発現率:0.1〜5%未満
黄体ホルモンには眠気を引き起こす作用があります。体内で分解される過程で、睡眠を促す物質に変わるためです。
十分な睡眠を確保することが基本的な対処法です。日中どうしても眠い場合は、15〜20分程度の短い仮眠を取ることも有効です。
副作用はいつまで続く?期間の目安と我慢のライン
「この副作用、いつまで続くの?」は最も多い疑問の一つです。目安となる期間と、受診すべきラインを解説します。
1〜3ヶ月で落ち着くケースが多い
日本産科婦人科学会のガイドラインや臨床データによると、ピルの副作用(マイナートラブル)は、90%以上の人が服用開始から3ヶ月目までに軽減または消失しています。
具体的な経過の目安は以下のとおりです。
- 1シート目(1ヶ月目):副作用が最も出やすい時期。吐き気、頭痛、不正出血などを感じる人が多い
- 2〜3シート目:体が慣れてきて、症状が軽くなる
- 3シート以降:多くの人で副作用が気にならなくなる
最初の1ヶ月は「つらいけど、もう少し様子を見よう」という気持ちで続けてみることをおすすめします。ただし、日常生活に支障が出るほどの症状であれば、無理をせず医師に相談してください。
受診すべき症状の判断基準
以下のいずれかに該当する場合は、様子を見ずに医師に相談することをおすすめします。
- 日常生活に支障が出るレベルの症状がある
- 3ヶ月(3シート)以上服用しても改善しない
- 生理2日目のような大量の不正出血がある
- 気分の落ち込みが2週間以上続いている
- 後述する血栓症の初期症状がある
「これくらいで病院に行っていいのかな」と迷う気持ちもあるかもしれませんが、副作用に関する相談は遠慮なくしてください。ピルの種類を変えることで症状が改善することも多いです。
副作用を軽減する6つの対処法
副作用は「我慢するしかない」わけではありません。以下の対処法で症状を軽減できる可能性があります。
服用時間を夜・就寝前に変える
吐き気が強い人に特に有効な方法です。
ピルを飲んでから数時間後に血中のホルモン濃度がピークに達します。日中に服用すると、活動中に吐き気が強くなりやすいのですが、就寝前に服用すれば、ピークが寝ている間に来るため、不快感を軽減できます。
空腹を避けて食後に服用する
空腹時にピルを飲むと、胃への刺激が強くなり、吐き気やむかつきが起きやすくなります。食後、胃に何か入っている状態で服用することで、これらの症状を抑えられることがあります。
吐き気止めを併用する
飲み始めの1〜2週間、吐き気がつらい場合は、吐き気止めを併用することも可能です。市販薬で対応できることも多いですが、心配な場合はピルを処方してもらう際に、一緒に吐き気止めも処方してもらうとよいでしょう。
吐き気が治まってきたら、吐き気止めは中止できます。
水分をしっかり摂る
1日1.5〜2リットルを目安に、こまめに水分を摂りましょう。頭痛やむくみの軽減に効果があるほか、血栓症の予防にも役立ちます。
特にコーヒーやお茶など利尿作用のある飲み物を多く摂る人は、意識して水分補給をしてください。
塩分を控えカリウムを摂取する
むくみが気になる場合は、塩分の摂取を控えめにしましょう。加工食品やインスタント食品には塩分が多く含まれているため、できるだけ避けるのが望ましいです。
同時に、カリウムを多く含む食品を積極的に摂りましょう。バナナ、アボカド、ほうれん草、じゃがいもなどがおすすめです。カリウムには体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあります。
ピルの種類を変更する
2〜3シート服用しても副作用が改善しない場合は、ピルの種類を変更することを検討しましょう。
ピルには複数の種類があり、含まれるホルモンの量や種類によって、同じ人でも副作用の出方が異なります。「このピルでは吐き気がひどかったけど、別のピルに変えたら全く問題なくなった」というケースは珍しくありません。
医師に「今のピルで〇〇の副作用がつらい」と伝えれば、あなたに合った別のピルを提案してもらえます。
【最重要】血栓症のリスクと予防法
ピルの副作用で最も注意が必要なのが「血栓症」です。正しい知識を持つことで、適切な予防と早期発見が可能になります。
血栓症とは?
血栓症とは、血液の一部が固まって「血栓(血の塊)」となり、血管を詰まらせてしまう病気です。
最も多いのは脚の深い部分にある静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」です。脚の痛みやむくみが主な症状ですが、この血栓が肺に飛ぶと「肺塞栓症」となり、突然の息苦しさや胸の痛みを引き起こします。脳や心臓の血管が詰まれば、脳卒中や心筋梗塞につながることもあります。
ピルに含まれるエストロゲンには血液を固まりやすくする作用がわずかにあるため、服用していない人に比べて血栓症のリスクが少し高くなります。
ピル服用者の血栓症リスク(数値で比較)
「血栓症が怖いからピルを飲めない」という声をよく聞きますが、実際のリスクはどの程度なのでしょうか。以下の表をご覧ください。
| 対象 | 年間の発症者数(1万人あたり) |
|---|---|
| ピルを服用していない女性 | 1〜5人 |
| 低用量ピル服用者 | 3〜9人 |
| 妊婦 | 5〜20人 |
| 産後12週以内の女性 | 40〜65人 |
この数字を見ると、ピルによって血栓症リスクは確かに上昇しますが、妊娠中や産後と比べると低いことが分かります。「血栓症リスクを考慮してピルを避ける」という判断は、「血栓症リスクを考慮して妊娠を避ける」のと同等かそれ以上に慎重な判断といえます。
過度に恐れる必要はありませんが、リスクがゼロではないことを理解し、初期症状を知っておくことが大切です。
血栓症の初期症状チェック「ACHES」
血栓症の初期症状は、頭文字を取って「ACHES(エイクス)」と呼ばれています。以下の症状が一つでもあれば、すぐにピルの服用を中止し、救急外来など医療機関を受診してください。
- A(Abdominal pain):激しい腹痛
- C(Chest pain):激しい胸の痛み、息苦しさ、呼吸困難
- H(Headache):今まで経験したことのないような激しい頭痛
- E(Eye problems):視界がぼやける、見えにくい、一部が欠ける
- S(Severe leg pain):ふくらはぎの激しい痛み、むくみ、赤み(特に片足だけに症状がある場合)
「突然」「急に」「今まで経験したことのない」症状が現れた場合は、血栓症を疑う必要があります。
血栓症リスクが高い人の特徴
以下に該当する人は、血栓症のリスクが高いため、ピルの服用に注意が必要です。場合によっては服用できないこともあります。
- 35歳以上で1日15本以上喫煙している
- 高度肥満(BMI30以上)
- 高血圧、糖尿病がある
- 血栓症になったことがある、または家族に血栓症の人がいる
- 前兆(目の前がチカチカするなど)を伴う片頭痛がある
- 長時間の座位を続ける仕事や生活をしている
これらに該当する場合は、医師に必ず伝えてください。
血栓症を予防するためにできること
血栓症のリスクを下げるために、日常生活で以下のことを心がけましょう。
禁煙:喫煙は血管を収縮させ、血栓リスクを大幅に高めます。ピルを服用するなら、禁煙は必須と考えてください。
こまめな水分補給:脱水状態は血液が固まりやすくなります。1日1.5〜2リットルの水分を摂りましょう。
定期的に体を動かす:デスクワークや長時間のフライトでは、1〜2時間に1回は立ち上がって足を動かしましょう。足首を回す、かかとを上げ下げするだけでも効果があります。
定期的な健康診断:血圧、血糖値、コレステロール値などを年1回は確認しましょう。
ピルの種類による副作用の違い
ピルには複数の種類があり、含まれるホルモンによって副作用の出方が異なります。
低用量ピルの世代と特徴
低用量ピルは、含まれる黄体ホルモンの種類によって「世代」に分類されます。
| 世代 | 代表的な薬 | 特徴 |
|---|---|---|
| 第1世代 | ルナベルLD、フリウェルLD | 歴史が長く、価格が比較的安い |
| 第2世代 | トリキュラー、ラベルフィーユ | 不正出血が起きにくい |
| 第3世代 | マーベロン、ファボワール | ニキビ・肌荒れの改善効果 |
| 第4世代 | ヤーズ、ドロエチ | むくみが起きにくい |
どの世代が「最も良い」というわけではなく、人によって合う・合わないがあります。副作用の出方を見ながら、医師と相談して自分に合ったピルを見つけることが大切です。
副作用を抑えたいなら超低用量ピル・ミニピル
副作用が心配な場合、以下の選択肢があります。
超低用量ピル:エストロゲンの含有量が通常の低用量ピルよりもさらに少ないタイプです。ルナベルULD、ヤーズ、ヤーズフレックス、ジェミーナなどが該当します。エストロゲンが少ない分、吐き気や頭痛などの副作用が出にくいとされています。ただし、不正出血は起きやすくなる傾向があります。
ミニピル:エストロゲンを含まず、黄体ホルモンのみで構成されたピルです。血栓症のリスクが極めて低いため、喫煙者や40歳以上の方、授乳中の方でも使用できる場合があります。ただし、毎日決まった時間に服用しないと避妊効果が下がるなど、飲み方に注意が必要です。
ピルを服用できない人(禁忌)
以下に該当する人は、血栓症などのリスクが高いためピルを服用できません。
絶対的禁忌(服用不可)
以下に該当する場合、低用量ピルは処方されません。
- 35歳以上で1日15本以上の喫煙者
- 血栓症になったことがある
- 前兆を伴う片頭痛がある
- 重度の高血圧(収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上)
- 乳がんの疑いがある、または乳がんの既往がある
- 妊娠中、または授乳中(産後6ヶ月未満)
相対的禁忌(慎重投与)
以下に該当する場合、リスクと効果を慎重に検討した上で処方が決定されます。
- 40歳以上
- 肥満(BMI30以上)
- 軽度の高血圧
- 糖尿病(合併症がない場合)
- 家族に血栓症の人がいる
オンライン診療でも対面診療でも、問診で必ず確認されます。正直に答えることが、安全なピル服用の第一歩です。
ピルの副作用に関するよくある質問
ピルの副作用について、特に多く寄せられる疑問にお答えします。
まとめ
ピルの副作用について、ポイントを整理します。
- ピルの副作用の多くは「マイナートラブル」と呼ばれる軽度なもので、吐き気、頭痛、不正出血、むくみなどが代表的
- これらの副作用は、1〜3ヶ月で改善するケースが多い(90%以上の人が3ヶ月目までに軽減)
- 服用時間の変更、吐き気止めの併用、ピル種類の変更など、対処法がある
- 血栓症は最も注意すべき副作用だが、発症率は1万人に3〜9人程度で、妊娠中より低い
- 血栓症の初期症状「ACHES」を覚えておき、該当する症状があればすぐに医療機関を受診
- 自分に合ったピルは人それぞれ。副作用がつらい場合は、遠慮なく医師に相談を
「副作用が怖いから」とピルを避けるのではなく、正しい知識を持った上で判断することが大切です。副作用を理解し、適切に対処すれば、ピルは生理痛の軽減やPMSの改善、避妊など、女性の生活をサポートしてくれる心強い味方になります。
不安なことがあれば、婦人科医に相談してください。あなたに合ったピルとの付き合い方が、きっと見つかります。
